「生き残るタレント」「消え去るタレント」その違いは何か? 元芸人のインタビュアー作家が見た生存競争の現実 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「生き残るタレント」「消え去るタレント」その違いは何か? 元芸人のインタビュアー作家が見た生存競争の現実

「生き残る人」が備えている才覚とは?

◉要求に答える力

 視聴者の求めるものに応えるということが先決でしょうが、それはテレビ制作側がやるべきことだから、出演者は視聴者の要求に応えるために、テレビマンの要求に応えればよいことになります。

 ある人気芸人がインタビューの際に、「勝俣州和さんは100%応えます」と話していました。

 これは何もスタッフの無茶振りに応えるという意味ではありません。

 例えば私が観たバラエティーでは、ある野菜を特集していて、勝俣さんはコメンテーター的な出演者の中で明らかにその野菜が好きではない態度をとっている。が、ある料理法によるその野菜を食べた瞬間、「これは美味い!」となる。この落差は制作側の思惑通り。番組の進行にとって理想的な立ち振舞いです。いわゆるテレビ芸が達者なのですね。

 

◉人間性というキャラ

 要求の話に関連しますが、ここ30年ほどのテレビは、芸とは別に、その人自身の魅力がかなり大きなウエイトだろうと思われます。前出のヒロシさんのように趣味ややっていることが売りやキャラクターとなり、テレビでもネタにされる。そこにその芸人やタレントの人間性も魅力として加味される。

 ある女性芸人にインタビューした際、モデルでタレントのアンミカさんがいるとそれだけで現場が明るくなる、アンミカさんは人のいいところだけを話して悪いところは決して言わない、ということでした。

 これは何も出演者やスタッフに媚びてるわけではありません。その場のいい雰囲気を作れるという人間的なキャラクター芸とでも言いますか。現場の雰囲気はテレビから伝わりますから、今の雑談中心のテレビでは大きな要素でしょうか。

 

◉意欲・やる気

「タレントなんだからみんな仕事にはやる気があるんじゃないか?」と思われるでしょうが、テレビで食えるようになり、ある程度のキャリアを積むと、もう「夢だった芸能界」ではなく「現実の仕事」です。

 私も芸人時代、楽屋で待ち時間が長いと、他のタレントたちから「事務所からいくら貰ってるの?」「子供が生まれたからお金がかかる」「税金対策でさあ」とお金のことを話されることもありました。

 または自分の能力に限界を感じ、「このままなら他の仕事に転職したほうがいいかも」とか、「なんかしんどいんだよなあ」と愚痴を言いあったり。

 そういう経験があるからか、インタビューしていると、もうテレビに出るのがしんどい、つらいというのが(もちろん言われなくても)取材中に感じ取れることがありました。

 私の偏見かもしれないが、女性は現実的で自分の魅力・能力に見切りをつけるのが男のタレントより早い気がし、「今は煮詰まってるが、必ず巻き返してスターになる!」という意欲は男の方が強い人が多いかもしれませんね。

 意欲が減退すると変化なんか出来ないし、マネージャーや制作側もそれを敏感に察知しますから、激しい競争の芸能界ではいつの間にか埋没していきますね。
「もっと出たい!」という人は1つのインタビューでも勢いがあります。波動が出てますよ。

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松野 大介

まつの だいすけ

1964年神奈川県出身。85年に『ライオンのいただきます』でタレントデビュー。その後『夕やけニャンニャン』『ABブラザーズのオールナイトニッポン』等出演多数。95年に文學界新人賞候補になり、同年小説デビュー。著書に『芸人失格』(幻冬舎)『バスルーム』(KKベストセラーズ)『三谷幸喜 創作を語る』(共著/講談社)等多数。沖縄在住。作家、ラジオパーソナリティー、文章講座講師を務める。

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